2013年02月27日
『お礼の達人』
『お礼の達人』 志賀内泰弘
名古屋駅近くの、友人の会社を訪ねた帰り道のことです。歩道を歩いていると、前方から白い杖をついている人がやってきました。
黄色い点字ブロックの上を、左右に杖を軽く叩きながら歩いて来られます。すれ違いざまに、
「お手伝いしましょうか?」
と声を掛けました。40代の快活そうな男性でした。今までの経験ではおおよそ、「お願いします」と言われるのが7割、「大丈夫です」「いいです」と言われるのが3割です。
しかし、今回は、そのどちらでもなく、
「バス停はどこですか?」
と尋ねられました。私はキョロキョロと辺りを見回しました。なんと、それはすぐ目の前にありました。
「ここです、ここです」
と言いつつも、相手には「ここ」がどこだかわかるはずもありません。
「目の前です」
と言い直すと、
「あっ! わかりました。ありがとう」
と、バス停に誘導するために分岐された点字ブロックに従って方向転換されました。
「どちらへ行かれるんですか?」
と尋ねると、
「名大(名古屋大学)行きに乗りたいんです」
とのこと。時刻表を見ると、路線は4つ。そこから、「名大行き」を探して、
「ちょっと待ってくださいね・・・ええっと・・・次の名大行きは5時32分です。今が、16分ですから15分ほど待っていて下さい。あっ、今、バスが来ましたがこれではありませんから乗らないでくださいね」
すると、大きな声で、
「ありがとうございます。ありがとうございます。助かりました〜!」
と言われました。それがもう、嬉しくて仕方がないということがバッチリ伝わる口調なのです。オーバーアクション付き。舞台俳優かなと思うほど、大袈裟でした。
そんなに喜んでもらえて、私は嬉しくなりました。嬉しくなったので、もう一つ「おせっかい」をしました。
「ここに、椅子がありますが座られますか?」
「あ!はい」
私が、「こっちです」と声で誘導すると、すぐに椅子に腰かけることができ、またまた、
「ありがとうございます! 助かります〜」
と言われました。あまり大声なので、ちょっと照れて恥ずかしくなるくらいでした。
「じゃあ、お気をつけて」
と言って私も家路に着きました。
帰りの電車の中で、私はたいへん幸せな気分になりました。最初は、困っている人に親切をしたからだと思いました。
しかし、ふと、心に疑問が湧きました。いや、違う・・・親切をしたからではない。あの「ありがとうございます!助かります〜」の言葉が嬉しかったからだということに気づきました。
さらに思ったこと。
あの男性は、お礼の達人に違いない。同じ「ありがとうございます」でも、喜びの気持ちを心を込めて言うと、相手の心の奥にまで伝わる。
ただの「ありがとうございます」だけでなく、「助かります〜」と付け加える、もっともっと相手は喜ぶ。
そのことを知っていて、助けてくれた人にはいつも「全身全霊」で「ありがとうございます」を言っているのではないか。
人に親切をすると、人はそれだけで幸せな気分になれます。さらに、お礼を言われると、もっと幸せになれます。すると、親切をした人は、もっともっと、親切をしようと思います。
この目の不自由な男性は、ひょっとすると、不自由な生活を送る中で、このことに気づいたのかもしれません。別に計算ずくでお礼を言っているというのではありません。
知らぬ間に、どうしたら相手が喜んでくれるのかという「お礼の言い方」を身に着けたのではないだろうか。そんなことを考えました。
私も、人から親切にされることがあります。そんな時、ぶっきらぼうに「ありがとう」と言ってはいないか。これからは、全力で(笑)「ありがとう!」を言ってみようと思いました。
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ただ言葉を言うのではなく
相手の心の奥底まで伝える気持ちで言ってみると言葉が変わるのでしょうね
耳から聞こえる言葉から、心に響く言葉に
Posted by 毎日コツコツ(霜鳥) at 17:52│Comments(0)
│今思った事 考えた事