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2012年11月10日

2度目の結婚式



《2度目の結婚式》


「一緒にバージンロードを歩きたかった」

娘の絵梨奈さんは、そう語った。


2012年11月7日午後3時。

武蔵村山市の松村瑛介さんと絵梨奈さんの結婚式が始まった。

夫婦にとって2度目の結婚式だった。


純白のドレスを着た絵梨奈さんの隣には、

父:田中勝さんが並び、

ゆっくりと牧師に向かって、

一歩一歩、歩みを進めていった。


参列者はおよそ100人。


一見、普通の結婚式に見えるけど、

たくさんの方々の想いや協力が集まった式だった。


場所は、東京都あきる野市のあきる台病院。

普段、食事や歓談に使われるスペースを式場に仕立てた、

全てが手作りの結婚式。


バラの造花で飾ったアーチ、

深紅のバージンロード、

ステンドグラスを模した窓飾り・・・


全て、病院の職員の手作りで創られた臨時の式場だ。


そして、参列者は、

親族、病院の職員、さらに、入院患者の方々が集い、

二人の門出を祝っていた。



「一緒にバージンロードを歩きたかった」

そんな絵梨奈さんの夢が叶った。


絵梨奈さんの父:勝さんは、脳出血の後遺症で、

病院から離れられず、

10月に行われた結婚式に参列できなかった。

そんな事情を知った病院の粋な計らいで行われた式だった。


一人娘の絵梨奈さんはお父さん子で、

成人しても2人で頻繁にラーメンを食べに行った。


「私の悩みを聞いてくれるのはいつもお父さん」

そう話すほど、娘と父は大の仲良し。

勝さんも、絵梨奈さんの結婚を楽しみにしていた。




昨年の12月のことだった。

父:勝さんがバイクで交差点を走っていたところ、

横から来たトラックにはねられ、重傷を負ってしまった。

トラックの信号無視が招いた惨事だった。



娘の晴れ姿を一目でも見たい!と

勝さんはリハビリを始め

一時は、回復に向かったが、

今年4月、脳出血を起こし、

意識障害や四肢のマヒが残って

寝たきりとなってしまった。


動かせるのは、 目と左手の先だけで、

会話すらできなくなった。


車椅子の生活になったとはいえ、

10月7日の娘の結婚式には、参加できる可能性は残っていたが、

血圧が安定せず、出席できなかった。


その瞬間、父:勝さんが心から楽しみにしていた

娘の花嫁姿を見ることは叶わぬ夢となった。

そして、娘:絵梨奈さんも

大好きなお父さんに晴れ姿を見せられず、落胆していた。


ところが、式前の9月、

そんな落胆する絵梨奈さんに、

病院医療福祉相談室の岩沢元太郎さんが提案してくれた。



「病院でも式を挙げませんか?」



病院で結婚式を挙げるのは初めてのことだったが、

ソーシャルワーカーたちが聖歌隊を結成して賛美歌を練習し、

作業療法士はワイシャツを切って

勝さんが着られるように加工するなど

病院職員が実現に向けて、誰もが協力してくれた。



勝さんの妻:政枝さんは式の途中、

何度か勝さんの目元をぬぐった。


娘を見つめる勝さんの表情は

「病床では見られないもの」だった。


「2人で式に出られたことで、

ようやく娘を嫁に出すという実感が持てた」


そう話す政枝さんは、病院の方々に心から感謝した。


式後、新郎:瑛介さんは参列者に

「夢を叶えられたのは病院の皆さんのおかげ」

と謝辞を述べ、

絵梨奈さんは勝さんへの手紙を、

真っ赤な目で読み上げた。



「元気になったら、ラーメンを食べに行こうと言ってくれるんじゃないかな。

その時には、ごちそうするね。

私のお父さんでいてくれて、

ありがとう」


輝く未来ビトより
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Posted by 毎日コツコツ(霜鳥) at 08:13│Comments(2)感動話
この記事へのコメント
★幸福の家庭、家族を歩み続けてつくりあげてください
Posted by 石川 博宣 at 2012年11月10日 08:43
石川さんありがとうございます(^-^)
Posted by 毎日コツコツ(霜鳥)毎日コツコツ(霜鳥) at 2012年11月11日 11:23
 
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